【要約】5分で読める『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』まとめ

【要約】5分で読める『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』まとめ マーケティング マーケティング

どうも、TJです!(自己紹介はこちら

今回ご紹介するのは、「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか? (角川文庫)」です。

正直、私はこの本を読んで泣きました。そして、森岡さんのことが大好きになりました。

「真のマーケター」というのはこういう人のことを言うんだ、と思い知らされました。

この記事では、本書で語られている、USJをV字回復に導いた「アイデアの神様を呼ぶイノベーション・フレームワーク」について、具体的な事例も交えながらご紹介したいと思います。

マーケティングに興味がある方、マーケターになりたいと思っている方は、ぜひご覧ください。

それでは行ってみましょう!

イノベーション・フレームワークとは

まずはじめにご紹介したいのは、本書冒頭で述べられてる次の一節です。

天才的な右脳人間になれなくてもいいのです。
常識的に物事を考える凡人ならではの強みを活かせば、必ず最高のアイデアに辿りつくのです。
このイノベーション・フレームワークを使えば、天才から凡人の手にアイデアを取り戻すことができます。

「プロローグ」より引用

いかがでしょうか?なんだか勇気が湧いてきますよね。

私も含めですが、「革新的なアイデアを考えられるのは天才だけ」と思い込んでる方は多いと思います。

森岡さん曰く、これからご紹介する方法を使えば、誰でも素晴らしいアイデアをひねり出すことができるのです。

イノベーション・フレームワークを支える4本柱

イノベーション・フレームワークは、4本の柱で構築されます。

イノベーション・フレームワーク
  1. フレームワーク
  2. リアプライ
  3. ストック
  4. コミットメント

それでは、ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

「フレームワーク」で考えるポイントを絞る

アイデアを生み出すに当たって、最初に最も大切なことは、何を必死に考えれば良いかわかっていることです。
(中略)
「フレームワーク」をという道具を使って、探すべきアイデアの「手がかり(必要条件)」を推理して導き出すのです。

「第6章 アイデアの神様を呼ぶ方法」より引用

本書では海釣りに例えられていますが、広大な海原で漠然と大物を釣ろうとしてもうまく行く確率は低そうですよね。

まずは、「どの辺に魚がいそうか」を推理して、そこに釣り糸を垂らす方が時間を無駄にすることは少ないと思います。

そのための魚群探知機に相当するのが「フレームワーク」です。

フレームワークには様々な種類があります。

本書では「戦略的フレームワーク」「数学的フレームワーク」「マーケティングフレームワーク」の3つが挙げられていますが、今回は「戦略的フレームワーク」をご紹介します。

戦略的フレームワークとは、「戦略を考えるときのフローを利用して、考えるべきアイデアの必要条件を導き出す方法」です。

「戦略を考えるときのフロー」については、こちらの記事に詳しくまとめているので、併せてご覧いただけると理解が深まると思います。

戦略を考えるときに最も大切なのは、最初に明確な「目的」を定義すること。

そして、その目的を達成するための「戦略」を立てます。

ここで重要なのが、その「戦略」こそが生み出すべきアイデアの範囲を決める「必要条件」そのものになっていることです。

なぜなら、戦略の延長にあって次に考えるべき「戦術」が「アイデア」そのものだからです。

実際に、森岡さんがUSJで戦略的フレームワークを使ってアイデアを考えた時の例をご紹介します。

森岡さんが入社した2010年当時、USJの年間集客数は700万~800万人程度。

最初に森岡さんが行ったのは会社が設定すべき成長目標、つまり会社としての目的を設定することでした。

緻密な分析の結果、向こう3年以内の「目的」として「1000万人の年間集客を安定的に達成すること」を掲げます。

次にその目的を達成するための戦略です。

背景や経緯は割愛します(気になる方は本書をご覧ください)が、結果的に「小さな子供連れファミリーを獲得する」ことを「戦略=必要条件」としました。

さらに、アイデアを考えやすくするためにもう一段階ブレイクダウンした4つの必要条件に落とし込みます。

1000万人の年間集客を達成するための戦略(=必要条件)

「小さな子供連れファミリーを獲得する」

  1. 「小さな子供連れは楽しめない」という消費者のパーク全体に対する認識を強く覆すものでなくてはならない。
  2. 実際に数割増えるであろう集客に十分に大きな収容キャパがなくてはならない。
  3. 設備投資金の予算内で実現できるアイデアでなければならない。
  4. 既存資産とのプラスの相乗効果で経営効率を高めるアイデアであれば尚良い。

ここまで来れば、あとは上記の必要条件を満たすアイデアをどんどん考えていくだけです。(森岡さんは、この過程が「なぞなぞ」に似ていると語っています)

こうして、森岡さんが最終的に考えついた「戦術=アイデア」が、親子連れが楽しめる新ファミリーエリア「ユニバーサル・ワンダーランド」の建設でした。

いかがでしょうか。

戦略(=必要条件)を子供連れのファミリーに絞ることで、例えばシニア層や独身層を呼び込むアイデアを考えなくて済むので、成功確率の向上につながっていることがお分かりいただけたかと思います。

「リアプライ」でアイデアを探す

フレームワークで考えるべきアイデアの必要条件が明確になったら、最初に世の中に目を向けましょう。
この世界中のどこかに、過去から現在に至るどこかに、似たような問題に直面した人がいるのではないか?と疑ってかかりましょう。世界中からアイデアを探すのです。
(中略)
自分自身で考えて作っていきたい!と願う気持ちは分からなくはないですが、私に言わせればそれは取るに足らない「個人のエゴ」です。
会社のためには速くて確率が高い方が良いにきまっているじゃないですか!

「第6章 アイデアの神様を呼ぶ方法」より引用

リアプライとは、「世の中から使えるアイデアを探して応用する」ことです。

著作権を侵害するような「パクり」とは全くの別物で、あくまで合法の範囲内で「ビジネスのアイデアを盗む」ことを指します。

森岡さんも、当時ユニバーサル・オーランドで開発中だった映像技術「4K3D」をリアプライして、「NEW アメージング・アドベンチャー・オブ・スパイダーマン・ザ・ライド-4K3D」を見事ヒットさせました。

日本人は人のアイデアを盗むことに対して消極的な傾向がありますが、世界で勝つためにどんどん盗みましょう。

ちなみに、リアプライには以下の3つのメリットがあります。

リアプライの3つのメリット
  1. どこかで成功しているアイデアを土台にした方がプロジェクトに圧倒的なスピードをもたらす
  2. どこかの消費者で試されている分だけ成功の確率も高い
  3. アイデアを自分で生み出すための引き出し(ストック)がものすごく増える

3つめのストックについては、次項で説明します。

アイデアの「ストック」を蓄える

転用できるアイデアがないか常に外にアンテナを張っておくと、自分に入ってくる有意義な情報量がどんどん貯まっていきます。
その蓄積されていく情報量は自分自身でアイデアを捻り出すときの「ストック」として、確率を高める強力な武器になります。

「第6章 アイデアの神様を呼ぶ方法」より引用

またまた海釣りに例えると、ストックというのは「魚の習性をどれだけよく知っているか」「エサや道具に関する知識の豊富さ」など、釣果を上げるために有効な知識や経験などの「情報の質的・量的な蓄積」のことです。

もちろん、すべてのことにおいてストックを強化することは難しいですが、自分が誰よりも知っている得意分野を創り出すことが、良いアイデアを生み出すために重要だと森岡さんは言います。

森岡さんの場合はその得意分野が「ゲーム」で、USJの全従業員5000人の中で人生でゲームに費やした時間で自分に勝てる人はいないと豪語しています。

本書でも詳しく書かれていますが、このゲームに対するストックが、「モンスター・ハンター・ザ・リアル」シリーズの開発につながったのです。

多くの人は会社で長く働きすぎです。さっさと早く仕事を切り上げて、自分へのインプットを増やす機会をどれだけ作れるかが、実は重要なキャリアの差を生むことを自覚した方がいいのです。

「第6章 アイデアの神様を呼ぶ方法」より引用

ちなみに森岡さんは、モンハンの2か月間のプレイ時間が300時間を超え、1日17時間プレイしたこともあったそうです。

さあ、早く仕事を切り上げて、インプットの時間を増やしましょう。

最後に成否を決めるのは「コミットメント」

ある問題について、地球上で最も必死に考えている人のところに、アイデアの神様は降りてくるのだと私は思っています。
要はどれだけ必死に考え続けることができるのか、です。

「第6章 アイデアの神様を呼ぶ方法」より引用

要するに、フレームワークで考えるべきポイントを明確にしたら、あとはつべこべ言わずに考えつくまで考え抜け、ということです。(私も耳が痛い)

これまで紹介した3つとは違って精神論ですが、最後に成否を決めるのはコミットメントだと森岡さんは言います。

森岡さんは「アイデアは絶対に見つかる。既に存在するのに自分が見つけられていないだけだ」と自己暗示をかけて、寝ても覚めても諦めずに必死に考えるそうです。

本のタイトルにもなっている「後ろ向きに走るジェットコースター」を思いついたのは寝ている最中のことで、すぐに飛び起きて夜明けまでに構想をまとめたというのだから驚きです。

淡白な人に「アイデアの神様」は微笑んでくれないのです。

「第6章 アイデアの神様を呼ぶ方法」より引用

私自身も戒めになりましたが、森岡さんのように諦めずに執念深く必死に考える、その「コミットメント」こそが何より大事なのです。

最後までやり抜くことの大切さについては、日本コカ・コーラ元社長、資生堂現CEOである魚谷雅彦さんが書かれた「こころを動かすマーケティング―コカ・コーラのブランド価値はこうしてつくられる」でも語られていますので、併せてご覧ください。

まとめ

神様の正体は確率です。
良いアイデアを思いつくのも思いつかないのも確率。
つまり、良いアイデアを生み出す方法とは、良いアイデアを思いつく確率を上げる方法です。

「第6章 アイデアの神様を呼ぶ方法」より引用

「アイデアの神様を呼ぶイノベーション・フレームワーク」について解説してきましたが、要するに良いアイデアを思いつく確率をあげる方法なのです。

こういった確率思考に基づいたマーケティングを実戦されているところが、森岡さんの魅力というか、凄いところなのかなと感じました。

ぜひみなさんも、イノベーション・フレームワークを実戦で活用してみてください。

ちなみに、肝心の「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?」について今回は詳しく紹介しなかったので、気になる方はぜひ本書をご覧ください。笑

また、森岡さんが書かれた「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力」では、「確率」の部分をより論理的に深掘って解説してくれていますので、こちらの記事も併せてご覧ください。

※余談ですが、森岡さんが代表を務める株式会社刀が手掛ける「西武園ゆうえんち」がリニューアルオープンしたことも話題になっていますね。

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