どうも、TJです!(自己紹介はこちら)
今回ご紹介するのは、戦略の大家であるリチャード・P・ルメルト氏が書かれた「良い戦略、悪い戦略」です。
本書では、良い戦略と悪い戦略の驚くべき違いを明らかにした上で、良い戦略をつくるための考え方やテクニックが詳しく解説されています。
あのメンタリストDaiGoさんも、Youtube動画の中で「すべてのビジネスマンが読むべき本」と強くおすすめしている一冊です。
経営者はもちろんのこと、仕事で戦略策定に関わっている方や、自分が所属する組織の戦略の良し悪しが気になっている方は必見の内容となっておりますので、そのエッセンスを余すところなく解説したいと思います。
それではさっそく見ていきましょう!
悪い戦略
まず、良い戦略をつくるためには、悪い戦略とはどんなものかを知っておく必要があります。
著者のルメルト氏は、悪い戦略には、以下の4つの特徴があると述べています。
それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
悪い戦略の特徴①:空疎である
空疎な戦略というのは、「分かり切っていることをふんだんな専門用語や業界用語で煙に巻くような戦略」ということです。
そのような戦略は、専門知識や戦略思考の末に練り上げられたような顔をしていますが、実際には中身がありません。
例として、本書で挙げられている大手リテール銀行の戦略は「顧客中心の仲介サービスを提供することである」というものでした。
一見すると大そうなものに聞こえますが、「顧客中心」というのは銀行業であればどこも同じですし、「仲介サービス」というのは、お金を預かって貸し出すという銀行の本業を言い直しているだけです。
つまり、この銀行は「われわれの基本戦略は銀行であることである」と言ってるのと同じなのです。
このように、悪い戦略は「分かり切ったことを必要以上に複雑に見せかける」ものであるという特徴があります。
悪い戦略の特徴②:重大な問題に取り組んでいない
そもそも戦略とは、困難な課題を克服し、障害物を乗り越えるためのものです。
したがって、その課題に取り組まないのであれば戦略とは呼べません。
かつて、全米4位の大企業だった農機具メーカーのインターナショナル・ハーベスターが1979年に完成させた「戦略プラン」は、典型的な悪い戦略でした。
この戦略プランは、詳細な部分まで記述がなされており、一見すると良さそうに見えましたが、最大の問題点は部屋の中の象、つまり「誰もが気づいていながら口に出さない脅威」を無視していることでした。
ハーベスターの象は「余剰人員を大量に抱えた非効率な組織」でしたが、目を皿にしてこのプランを読んでも、そのことについては一言も書かれていなかったのです。
同社の利益率は業界標準の半分に過ぎず、しかも労使関係は国内で最悪でした。
この像を無視し続けた結果、労使交渉に失敗して6か月の長期ストライキを招き、立ち直れないほどの損失を出した挙句、事実上の倒産に至ったのです。
悪い戦略の特徴③:目標と戦略を勘違いしている
根拠のない高い目標のことを戦略と称している経営者がいたら、それは間違っていると教えてあげてください。
本書では、あるグラフィックアート会社の例が紹介されています。
その会社の社長にコンサルを依頼された著者が、同社の戦略を尋ねたところ、「売上高を毎年20%伸ばし、利益率を20%以上にすること」という答えが返ってきました。
名付けて「20/20プラン」というこの目標に対して、どのようにして達成するのかと著者が問うと、社長の答えは「絶対にやり遂げるという意思を持って、達成するまでやり抜くこと」だったそうです。
結果的にコンサル契約には至らず、著者にとってはハッピーという結末になりましたが、このように目標と戦略を取り違えて、希望的観測で事業を進める経営者は要注意です。
悪い戦略の特徴④:間違った戦略目標を掲げて進む
そもそも「戦略目標」とはなんでしょうか?
リーダーは、組織としての理想や価値観や期待を表す「努力目標」あるいは「最終目標」と、戦略実行のための「戦略目標」を明確に区別することが望ましい。
たとえばアメリカにとって、自由・正義・平和・安全・幸福は「最終目標」と位置づけられ、それを実行可能な戦略目標に転換するのが戦略の役割になる。
たとえば「タリバンを倒してインフラを再建する」などは「戦略目標」に当たる。
「第3章 悪い戦略の四つの特徴」より引用
つまり、「戦略目標」とは戦略を実現するための手段です。
これに対して悪い戦略では、「寄せ集め」の「非現実的」な目標を、戦略目標に掲げてしまうことが多くあります。
悪い戦略目標①:寄せ集めの目標
本書で例として挙げられている、アメリカ西海岸のとある市長の「戦略プラン」は、まさに典型的な「寄せ集めの目標」でした。
そこに記載されている戦略の数はなんと47個もあり、取組事項は178個にも上りました。
極め付きはその122番目に「戦略プランを作成する」と書かれており、これには著者も思わず笑ってしまったそうです。
このように、様々な部署から関係者が集まって、それぞれにやるべきこと、やってほしいことを言い合うような戦略づくりをしていると、えてして「寄せ集めの目標」になってしまうのです。
悪い戦略目標②:非現実的な目標
2006年に全米最大規模のロサンゼルス学区の教育長に任命された元米海軍中将のデービッド・ブリューワーは、その学区の成績立て直しを任されました。
ブリューワーは、学力テストのスコアが極めて低い34校を「重点校」に指定し、重点的に学力改善に取り組むことにします。
ここまでは良かったのですが、具体的に設定した戦略目標に大きな問題がありました。
例としてその一つに、「学校ごとに保護者、教師、学校職員、地域パートナーによるコミュニティを形成し、質の高い教育・学習の実現に向けて協力する」というものがあります。
これは一見良さそうに見える戦略目標ですが、実際にはまったくもって非現実的な目標でした。
なぜなら、重点校34校の多くは貧しく無秩序な環境に置かれており、低賃金の労働に従事している疲れ切った親たちが、コミュニティ活動などに参加できるはずがないからです。
つまり、ブリューワーの戦略目標の致命的な欠陥は、「なぜ成績が悪いのか」という原因を見つけようとしなかったことでした。
このように、単に願望を語るだけであったり、戦略を実現するためにどうすればよいかが無視されている目標では、戦略を立てる意味はありません。
重要な課題を見極め、その課題にどう取り組むか、行動の道筋をつけるのが良い戦略です。
なぜ悪い戦略がはびこるのか
ここまでで「悪い戦略とはなにか」について解説してきましたが、なぜ悪い戦略が世の中に溢れているのでしょうか。
悪い戦略がはびこるのは、分析や論理の戦略を一切行わずに、言わば地に足の着いていない状態で戦略をこしらえ上げようとするからである。
「第4章 悪い戦略がはびこるのはなぜか」より引用
その背後には、面倒な作業はやらずに済ませたい、調査や分析などしなくても戦略は立てられるという安易な願望がある。
つまり、悪い戦略とは「良い戦略を練り上げるためのハードワークを自ら避けた結果」なのです。
さらに具体的には、これから説明する以下の3つが主な要因だと考えられます。
ひとつずつ見ていきましょう。
困難な選択を避ける
なぜハードワークを避けるのかと言えば、考えるのは大変だし選ぶのは難しいからです。
戦略や競争優位についてはさまざまな理論が展開されているが、戦略策定のむずかしさは、結局のところ選択そのものにある。
「第4章 悪い戦略がはびこるのはなぜか」より引用
価値観の異なる人々と、相反する要求の中からどれかひとつを選択することは、なかなか大変なことですよね。
しかし、選択をすることこそリーダーの仕事です。
みんなの意見を捨てる困難さに負けて、選ぶことを避け、誰もが傷つかないようにしても良い戦略は生まれません。
悪い戦略は誤った考えとリーダーシップの欠如から生まれるのです。
まさにこの困難に直面したのが、元インテルCEOのアンディ・グローブ氏でした。
ご存じの通り、インテルは半導体メモリからスタートした会社として成功を収めましたが、1984年頃には日本企業との価格競争に耐えられないことがはっきりしていました。
赤字は増える一方で、経営陣がどうすべきか決断できない状況で、グローブ氏はインテル会長のゴードン・ムーア氏にこんな質問をします。
「もしわれわれが更迭され、取締役会が新しいCEOを連れてきたとしたら、その男はまず何をすると思いますか」。
ムーアは即答した。
「メモリ事業から撤退するだろう」グローブはしばしこの言葉を嚙みしめ、それからおもむろに言った。
「第4章 悪い戦略がはびこるのはなぜか」より引用
「ではなぜわれわれが、クビになったつもりになって、それをやらないんです?」
このやり取りがターニングポイントとなり、インテルは「半導体メモリの製造を打ち切り、マイクロプロセッサに集中する」という選択をします。
しかし、その決心を固めてから実際に改革を断行するまでにはなお一年を要しました。
営業部門は顧客の怒りを買うとして困惑し、研究陣はメモリ関連の予算打ち切りに猛反発しました。
それでもグローブ氏は改革を推進し、1992年には、インテルは半導体市場で世界最大手に上り詰めたのです。
穴埋め式チャートで戦略をこしらえる
見栄えの良い資料に、耳障りの良い言葉を並べて、実際にはまったく中身がない。
そんな「悪い戦略」が量産される原因は、意外なところにあります。
ひどく奇妙なことだが、ある種の悪い戦略を量産するきっかけを作ったのは、カリスマ的リーダーの研究である。
「第4章 悪い戦略がはびこるのはなぜか」より引用
(中略)
カリスマ的リーダーあるいは変革リーダー論で革新的なのは、リーダーの公式が編み出されたことである。
(中略)
こうした図式化されたモデルは、高学歴の人たちの間でひどく人気が高い。
さらに2000年代前半になると、リーダーシップとともに戦略理論の研究も進み、テンプレート式の「戦略プランニング」が考案されるようになりました。
「ビジョン・ミッション・価値観・戦略を決めよ」といったこの手のフォームは大流行し、このことが結果的に悪い戦略がはびこる原因になっていると著者は述べています。
カリスマ的なリーダーほど、「リーダーたるものビジョンを打ち出さねばならない」という発想を重視しますが、穴埋め的にそれらを考えるのはあまりに安易です。
例えば、本書で紹介されているNECのビジョンは「人と地球にやさしい情報社会をイノベーションで実現するグローバルリーディングカンパニー」でしたが、同社の営業利益率は1.5%と低く、これではそのビジョンを実現するための研究開発費も捻出できません。
NECに必要なのは利益を増やす戦略であって、聞こえの良いスローガンではないのです。
戦略づくりは、言葉遊びではありません。
成功すると考えたら成功する
所謂「マインド本」も、悪い戦略がはびこる原因のひとつです。
つまり、「死ぬ気でがんばればなんとかなる」「信念の強さが何よりも大事」といった考えを信じることが、良い戦略をあきらめることにつながるのです。
強く念じることや自分の内面を磨くことでパワーが出るものかどうか、私は知らない。
「第4章 悪い戦略がはびこるのはなぜか」より引用
だが、精神から発する光が現実の世界を変えられるとか、成功すると思えば成功すると信じるのは一種の妄想であって、経営や戦略への取り組み姿勢としては奨められないことだけは確かだ。
このように、著者は戦略における「精神論」を否定しています。
そもそもこういった精神論は宗教哲学(プロテスタント流の個人主義)に端を発し、様々な流れを汲んだ結果、「人間の信念には物理的世界に影響を及ぼす力がある」という神秘思想へと変化していったのです。
ポジティブシンキングに逃避するのではなく、批判的に考えて戦略を立てるべきです。
良い戦略
ここからはいよいよ、「良い戦略とは何か」について解説していきたいと思います。
良い戦略とは何でしょうか。
それは、以下のような言葉で表現できるかもしれません。
重要なことは、教科書に書かれていることをなぞるように「良い戦略」を語ることではなく、自分だけの言葉で「良い戦略とはこういうものだ」と自信を持って言えることだと思います。
そして、良い戦略には必ずしっかりとした論理構造があります。
良い戦略の基本構造
良い戦略がもつべき論理構造をカーネル(核)と呼び、「診断」「基本方針」「行動」の三要素で構成されます。
まずは、状況を診断して問題点を明確にし、それにどう対処するかを基本方針として示します。
この基本方針の下で意思統一を図り、リソースを投入し、一貫した行動をとるのです。
例えるなら、医師が患者の症状から病名を診断し、治療方針を決め、それに基づいて投薬などの行動を促して治癒を目指すことと似ています。
カーネルを構成する三要素について、以下でさらに詳しく見ていきましょう。
診断
診断とは「何が起こっているのか」を洗い出す作業のことです。
実際、戦略を立てる作業の多くは、何が起きているのかを洗い出すことにある。
「第5章 良い戦略の基本構造」より引用
何をするか決めることだけが戦略ではない。
より根本的な問題は、状況を完全に把握することである。
洗い出した結果、客観的な事実を基に、どの課題に取り組むかを見極めることが重要です。
断片的な兆候や症状からパターンを割り出し、どこに注意を払い、どれはあまり気にしなくてよいかを選別しましょう。
すぐれた診断は、どのような行動が必要なのかを自ずと示すことができるものです。
1993年にルー・ガースナーがIBMのCEOに就任した時、同社は深刻な業績低迷に苦しんでいました。
マイクロプロセッサの出現によってコンピュータ業界の細分化が進む中で、「IBMの図体は大きすぎる」「解体して身軽になるべきだ」というのが大方の見方でした。
ところが、ガースナーはIBMの問題は「総合的なスキルを活かせていない」ことにあると診断し、さらに統合化を進めて顧客向けのソリューションに力を入れていくべきだと考えます。
この診断に基づき、「すべてを自前で提供できるというIBMの独自性と行動な技術力、そしてブランド力を活かして顧客にオーダーメイドのソリューションを提供する」という基本方針が立てられました。
こうしてIBMは新しい方向に進み始め、現在の確固たる地位を築いたのです。
基本方針
診断によって判明した障害物を乗り越えるために、どのようなアプローチで臨むかを示すのが基本方針です。
ちょうどガードレールのように、基本方針は行動を一定の方向に導き逸脱を防止する。
「第5章 良い戦略の基本構造」より引用
しかしこまかい内容は指示しない。
良い基本方針は、目標やビジョンではないし、願望の表現でもありません。
難局に立ち向かう「方法」を固め、他の選択肢を排除して行動を促すのが基本方針です。
ただし、「基本」という言葉が付いているように、大きな方向性を指し示すだけであって、具体的に何をすべきかを逐一教えるものではありません。
基本方針が実際にどう作用するかを示す例として、著者の友人で食品店のオーナーを務めるステファニーの話が紹介されています。
彼女は食品店の経営において、値上げをすべきか、人員を増やすべきか、広告を出すべきかなど、どの手段を講じるべきなのか決断できず、著者に相談しました。
著者が、「何が頭痛の種なのか」を診断するように促すと、彼女は「地元にできたスーパーマーケットの競合が問題」だと打ち明けました。
年中無休のうえ、値段も安いそのスーパーから客を奪うためにどうするべきか、彼女は改めて自分の店の客層や特徴を注意深く分析し、「忙しく働く人たちのニーズに応える」ことを基本方針に選びます。
さらに、「仕事が忙しくて料理の時間がとれない人」をターゲットに絞り込むことで、スナック菓子を減らして高級総菜を導入することや、駐車スペースを用意することなどを検討し始めます。
また、会社員は真夜中に買い出しはしないだろうから終夜営業をやめたり、退社時刻や昼食時に店員を多めに配置することにしたり、夕方の混雑時に備えてレジを増設したりと、次々に施策を講じました。
彼女が設定した基本方針がベストかどうかは誰にも分かりませんが、基本方針を立てることで、無数の手段の中から方針に沿った行動を選び、一貫性をもって取り組めるようになったのです。
実行
基本方針が定まったら、あとは行動へと足を踏み出すのみです。
多くの人が基本方針を戦略と名づけて、そこで終わってしまう。
「第5章 良い戦略の基本構造」より引用
これは、大きなまちがいだ。
戦略は行動につながるべきものであり、何かを動き出させるものでなければならない。
(中略)
最も優先すべきことを決めるのは、戦略を立てる中で最も困難な作業である。
この作業を完了して初めて、行動に移すことが可能になる。
ここで大事なことは、良い戦略のカーネルから導かれる行動は、矛盾や対立がなく一貫したものになるということです。
戦略が実現する優位性の多くは、一連の行動の一貫性によってもたらされるのです。
一橋大学教授の楠木健さんが、ベストセラーとなった「ストーリーとしての競争戦略」の中で、これと同じようなことを言っていたのを思い出しました。
ちなみに、実行を推進するうえで役に立つ、強力な手段の一つが「近い目標」です。
「近い目標」とは、手の届く距離にあって十分に実現可能な目標を意味します。
1960年代、アメリカと旧ソ連の宇宙開発競争が熾烈を極める中、ケネディ大統領は「人類初の月面着陸を実現してみせる」と宣言します。
そして、そのための重要なミッションとしてNASAの研究所に課せられたのが「無人月面探査機の開発」でした。
気が遠くなるようなこの目標に対して、研究主任を務めていたフィリス・ブワルダは「近い目標」を設定します。
それは、「アメリカの砂漠をイメージして無人月面開発を進める」というものでした。
実際の月面の状況が分からず設計作業が一向に進まない中で、フィリスは、技術者がプロジェクトを前に進められるような「近い目標」を戦略的に選んだのです。
どんなプロジェクトでも状況が完全に解明されているということはめったにない。
「第7章 近い目標」より引用
このようなとき、リーダーは複雑で曖昧な状況を整理して、何とか手のつけられる状況に置き換えなければならない。
(中略)
近い目標を設定してチームが動けるようにすることがリーダーの大切な使命である。
結果的に、7機打ち上げた無人月面探査機のうち、5機が無事月面に着陸して任務を果たしました。
フィリスの「近い目標」がなければ、人類初の月面着陸は実現しなかったかもしれません。
戦略思考のテクニック
ここまでで、「良い戦略」の本質について、なんとなくお分かりいただけたのではないかと思います。
最後に、より良い戦略を練り上げるために役立つ「テクニック」をいくつかご紹介します。
リストを作成する
まず一つ目のテクニックは、「リストを作成する」です。
「え、そんな当たり前のこと?」と思われたそこのあなた、侮ってはいけません。
リストを作ることは、認識能力の限界を乗り越える手段と言える。
「第17章 戦略思考のテクニック」より引用
リストがあれば忘れてしまうことを防げるし、リストを作る過程で、抱えている問題の相対的な緊急度や重要度を天秤にかけることができる。
そして「いまやるべきこと」が明確になれば、問題解決に向けた行動を起こせるはずだ。
そう、人間の認識能力には限界があるのです。
人間は、目先のことに気を取られると、大切なことをすぐに忘れてしまいます。
そのような近視眼的傾向を克服し、ライバルよりも広い視野を持つことが「戦略的になる」ということで、その手助けをしてくれるのがリスト作成なのです。
注意していただきたいのは、単なる「やることリスト」をつくるのではなく、「重要で、かつ実行可能なこと」のリストを作成するということです。
かの有名な鉄鋼王アンドリュー・カーネギーは、とあるコンサルに「あなたにできる重要なことを10項目列挙したリストをつくることをおすすめします」という助言を受けて、感謝の気持ちから彼に1万ドルの小切手を贈ったといいます。
おそらく、その助言に従ったカーネギーは、リストを作成することで最も重要な目標を選び出し、どのように達成するかについて熟考することができたのでしょう。
それだけ、「リストをつくる」という行為には強力なパワーがあるのです。
カーネルに立ち帰る
カーネルは、良い戦略には最低限3つの要素(診断、基本方針、行動)が備わっていることを思い出させてくれます。
これも一種のリストです。
とはいえ、困難な状況下で、3つの要素がそろった戦略をすぐに考えられる人はめったにいません。
ですが、カーネルに立ち帰れば、最初は1つの要素しか考えられなくても、そこから3つの要素へと思考が拡がっていくのです。
繰り返しになりますが、状況を診断し、基本方針を定め、一貫した行動を設計することは良い戦略に欠かせません。
最初の案を破壊する
最初の思いつきで戦略を立てる悪癖を直すテクニックとして有効なのが、最初の案を破壊して別の戦略を探すことです。
とはいえ、苦労して考えた自分のアイデアを破壊するのは容易いことではないし、楽しい作業でもないですよね。
そんな時に有効なのが「バーチャル賢人会議」、自分が「師匠」と仰ぐ人たちの集まりです。
「師匠」ならこんな時どう言うだろうと考えることで、自身の考えに対する客観的な評価を得ることができるのです。
バーチャル賢人会議から学ぶことには、単に話を聴いたり著作を読んだりする以上の価値がある。
「第17章 戦略思考のテクニック」より引用
彼らのアドバイスを聞くためにあなたは一歩立ち止まり、自分の考えを整理し、さらに一歩踏み込んで、賢人ならどう言うだろうかと考えるからだ。
ちなみに、著者のバーチャル賢人会議にはスティーブ・ジョブズや学生時代に薫陶を受けたブルース・スコット教授などのメンバーがいるそうです。
あなたなら、誰をバーチャル賢人会議のメンバーに選びますか?
まとめ
いかがだったでしょうか。
良い戦略と悪い戦略にどんな違いがあるのか、良い戦略を考えるために大事なポイントは何かが、お分かりいただけたのではないかと思います。
著者が本書を執筆した第一の目的は、「多くの組織で『戦略』と称している代物の化けの皮をはぐこと」だそうです。
「本物の戦略」を見極められる目を養って、行動に直結する単純明快な戦略を描きましょう。
「戦略についてもっと知りたい!」という方は、元USJの森岡毅氏が書かれた「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門」も併せてご覧ください。
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