どうも、TJです!(自己紹介はこちら)
今回ご紹介するのは、元マッキンゼーでヤフーのCSO、慶応義塾大学教授など様々な肩書をもつ安宅和人氏が書かれた「イシューからはじめよ──知的生産の「シンプルな本質」」です。
本書では、「脳科学×マッキンゼー×ヤフー」のトリプルキャリアをもつ安宅さんが編み出した、「圧倒的に生産性の高い人」になるための問題設定方法とその解決方法について詳しく書かれています。
「仕事の生産性を上げたい」「ロジカルシンキングを身につけたい」とお考えの方は必見の内容となっています。
それではさっそく見ていきましょう!
※本記事について解説したYoutube動画もありますので、ぜひこちらも併せてご覧ください。
イシューとは何か
イシューとは、ひとことで言うと「本当に取り組むべき課題」のことです。
本書では、「2つ以上の集団の間で決着のついていない問題」「根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題」の両方の条件を満たすものがイシューであると定義されています。
課題を解く力よりも、課題を見極める力、すなわち「イシューを見極める力」の方が重要であるというのが、本書のメインメッセージです。
問題はまず「解く」ものと考えがちだが、まずすべきは本当に解くべき問題、すなわちイシューを「見極める」ことだ。
「第1章 イシュードリブン – 『解く』前に『見極める』」より引用
なぜイシューからはじめるのか
イシューからはじめるのは、「生産性」を高めるためです。
本書の定義では、「生産性 = アウトプット ÷ インプット = 成果 ÷ 投下した労力・時間」です。
すなわち、生産性を高めるためには、同じアウトプットを生み出すための労力や時間を削るか、同じ労力や時間でより多くのアウトプットを出さなければなりません。
バリューのある仕事とは
ここで言うアウトプットとは、対価がもらえるような意味のある仕事、すなわち「バリューのある仕事」です。
バリューのある仕事とは、「イシュー度(どれだけ良い課題を設定するか)」と「解の質(どこまで明確な答えを出せているか)」が高い仕事のことで、以下の図で表すと右上の象限がそれにあたります。
多くの人は、「解の質」が仕事のバリューを決めると考えがちですが、本当に重要なのは「イシュー度」です。
なぜなら、どんなに「解の質」が高くても、「イシュー度」の低い仕事の価値はゼロに等しいからです。
脱「犬の道」
ここで絶対にやってはならないのが、「一心不乱に大量の仕事をして右上に行こうとする」ことです。
労働量によって上にいき、左回りで右上に到達しようというこのアプローチを、安宅さんは「犬の道」と呼んでいます。
なぜ「犬の道」がだめかというと、バリューのある仕事が生まれる確率が限りなくゼロに近くなるからです。
なぜでしょうか?
まずは「イシュー度」についてですが、安宅さんは次のように述べています。
世の中で「問題かもしれない」と言われていることの総数を100とすれば、今、この局面で本当に白黒をはっきりさせるべき問題はせいぜい2つか3つくらいだ。
「序章 この本の考え方 – 脱『犬の道』」より引用
「努力と根性があれば報われる」という戦い方では、いつまでたっても右上のバリューある領域には届かず、ただ疲弊していくだけです。
次に、「解の質」についてですが、安宅さんがマッキンゼーで働き始めたばかりの頃は、毎日大量の分析を行い、数カ月のプロジェクトで書いたチャートは500枚を超えたそうですが、最終報告に入ったのはたったの5枚だけだったそうです。
つまり、この場合は「イシュー度」は上司によって厳選されていたので、安宅さんが取り組んだ「解の質」は1%だったということになります。
したがって、何も考えずにがむしゃらに働き続けても、「イシュー度」「解の質」はそれぞれ1%程度の成功率なので、「バリューのある仕事」が生まれる確率は0.01%になってしまうのです。
ちなみに、マッキンゼーをはじめとするコンサル業界の働き方に興味がある方は、ビジネスコンサルタントの大石哲之さんが書かれた「コンサル一年目が学ぶこと」もぜひご覧ください。
圧倒的に生産性を上げるためのアプローチ
では、「バリューのある仕事」をするためにはどうすればよいのでしょうか?
そのアプローチは極めて明快で、まずは「イシュー度」を上げ、その後に「解の質」を上げていくことです。
つまり、「犬の道」とは反対の右回りのアプローチを採るということです。
決して「根性」という言葉に逃げず、最短で最高のアウトプットを出すプロフェッショナルを目指しましょう。
また、圧倒的に生産性を高めるためには「地頭力を鍛える」ことも必要ですので、ぜひこちらも併せてご覧ください。
良いイシューの条件
イシューからはじめる理由が分かったところで、ここからは、「いかにして良いイシューを見極めるか」について解説していきます。
そもそも、良いイシューとはどんなものでしょうか?
安宅さんは以下の3つが「良いイシューの条件」であると言います。
それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
本質的な選択肢である
良いイシューは、その先の方向性に大きく影響を与えたり、行動の変化を生み出すものでなければなりません。
つまり、良いイシューとは「本質的な選択肢 = カギとなる質問」なのです。
例えば、ある食品メーカーで「商品Aが売れない」という理由を検討している場合、「Aに商品力がないの」のか「Aに商品力はあるが、販売方法が良くない」のかといった問いは、本質的な選択肢であると言えます。
なぜなら、どちらかが証明された場合、その後の戦略見直しのポイントが大きく変わってくるからです。
深い仮説がある
深い仮説とは、「常識を覆すような洞察」があったり、「新しい構造」で世の中を説明していたりするものです。
例えば、前者の典型的な例は地動説です。
日常的に生活している限り「太陽が地球の周りを動いている」ようにしか見えませんが、「実は地球が太陽の周りを動いている」ことを証明し、文字通り天地がひっくり返るような衝撃を世界に与えました。
「新しい構造」で世の中を証明するというのは、見慣れたものに対して、これまでにない理解を得るということです。
例えば、「机の上から落ちる鉛筆」と「地球から見える月が安定して浮かんでいる」というのが同じルールで説明できることが分かると、より深い構造的な気づきにつながりますよね。
これらのような深い仮説を立証できれば、大きな価値を生むであろうことは誰もが納得できると思います。
逆に、「スタンスが曖昧」であったり「常識的すぎる」仮説は、悪いイシューの条件です。
仮説が曖昧だと検証のための調査が膨大になりますし、常識的すぎる仮説だと行動の変化が生まれません。
答えを出せる
良いイシューの最後の条件は、現在の自分の技術や状況で答えを出すことができる、ということです。
当たり前のように思われるでしょうが、「重要であっても答えを出せない問題」は世の中にいくらでもあるのです。
例えば、「複数の企業で市場の大半を占めている場合、商品の値付けはどうするべきか」というのは、重要な問いに見えますが、現時点で分析的に明確な答えを出す方法は存在しません。
フェルマーの最終定理が300年の時を超えて、近代数学の限りを尽くして解かれたように、「手法が見つかってはじめてよいイシューとなった」という例もありますが、現在の手法で本当に答えを出せるのかをしっかり見極める必要があります。
さもなければ、時間的な面でも工数的な面でも、取り返しのつかないダメージになりかねません。
イシューの見極め方
良いイシューの条件が分かったところで、肝心の見極め方について解説します。
大枠の進め方としては、まず「何に答えを出す必要があるのか」という議論からはじめ、「そのためには何を明らかにする必要があるのか」という流れで分析を設計していきます。
イシューを見極めるうえで、主にやるべきことは「専門家の意見を聞く」「仮説を立てる」「一次情報を収集する」の3つです。
専門家の意見を聞く
イシューを見極めるためには「実際にインパクトがあるか」「説得力あるかたちで検証できるか」「想定する受け手にそれを伝えられるか」という判断に必要になります。
この判断には、ある程度の経験と「見立てる力」が必要なので、その領域について詳しい人に確認するのが手っ取り早いです。
書籍やブログなどで「この人は」という人を見つけたら、思い切って面会や相談を申し込むことをお勧めします。
そのような「知恵袋的な人」をもてるかどうかが、アウトプットの顕著な差を生むのです。
仮説を立てる
良いイシューの条件として「深い仮説がある」ことが重要であるとお伝えしましたが、仮説を立てるというのは、すなわち「スタンスをとる」ということです。
「こんな感じのことを決めないとね」といった「テーマの整理」に終始してしまう人が多いですが、それではまったく不足しています。
自分はどうしたいのか、何を明らかにしたいのか、という「スタンスをとる」ことを心がけましょう。
仮説を立てる際には、「何はともあれ言葉にする」ことが大切です。
言葉にすることで、「自分がそのイシューをどのようにとらえているのか」「何と何についての分岐点をはっきりさせようとしているのか」を客観的に認識することができます。
それによって、必要な情報や分析すべきこと、分析結果の解釈が明確になり、仕事がどんどんラクになります。
一次情報を収集する
イシューを見極めるための手がかりを掴むために、取り組んでいるテーマに対して「考えるための材料をざっくりと得る」ことが必要になります。
つまり、時間をかけ過ぎずに大枠の情報を集め、対象の実態についての肌感覚を持つことです。
ここで大事なのは、誰のフィルターも通っていない「一次情報」に触れることです。
要するに、「現場で何が起こっているのかを目で見て、肌で感じる」のです。
優秀で頭が良いと言われている人ほど頭だけで考えて、一見すれば効率の良い読み物などの二次情報から情報を得たがる傾向が強いようですが、重要な局面でそれが命取りになることを肝に銘じておきましょう。
この話、どこかで聞いたことあるなと思ったら、「こころを動かすマーケティング」にも同じことがかいてありました。
↓ぜひこちらも併せてご覧ください。
また、「集めすぎない」「知り過ぎない」ことも大切です。
情報収集の効率は必ずどこかで頭打ちになり、情報があり過ぎると「自分ならではの視点」が失われ、知恵が出なくなります。
これを念頭に置き、情報収集は意図的にざっくりとやる、つまり「やり過ぎない」ように注意しましょう。
分析の本質
最後に、「分析とは何か?」についてお話しします。
世の中にデータが溢れかえっているこの時代、至るところで「分析」という言葉を耳にすると思いますが、その本質はどこにあるのでしょうか?
これに対して、安宅さんは次のように述べています。
僕の答えは「分析とは比較、すなわち比べること」というものだ。
「第3章 ストーリーを絵コンテにする」より引用
分析と言われるものに共通するのは、フェアに対象同士を比べ、その違いを見ることだ。
例えば、「ジャイアント馬場はデカい」と聞いて、「これを分析だと思うか?」と尋ねると、ほとんどの人は分析ではないと答えるでしょう。
しかし、ジャイアント馬場の身長を日本人と他国の人の平均身長と比較して見せると、ほとんどの人が「これは分析だ」と答えると思います。
つまり、適切な「比較の軸」が分析のカギになります。
どのような軸で何と何を比べるのか、これを考えることが分析設計の本質なのです。
ちなみに、データ分析のやり方や統計学について興味がある方は、ぜひこちらも併せてご覧ください。
まとめ
いかがだったでしょうか。
安宅さんが語る「知的生産のシンプルな本質」が、なんとなくお分かりいただけたのではないかと思います。
この考え方を身につければ、やるべきことは「100分の1」になります。
人生は何かを成し遂げるためにはあまりにも短い。
「犬の道」を脱出して、「バリューのある仕事」ができるプロフェッショナルになりましょう。
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ではまた!