【要約】5分で読める『サクッとわかるビジネス教養 行動経済学』まとめ マーケティングへの応用法

【要約】5分で読める『サクッとわかるビジネス教養 行動経済学』まとめ マーケティングへの応用法 マーケティング

どうも、TJです!(自己紹介はこちら

今回ご紹介するのは、東京大学経済学部教授の阿部誠さんが書かれた、「サクッとわかるビジネス教養 行動経済学」です。

本書では、マーケティングと関係の深い「行動経済学」について、基本的な理論や具体的な応用例まで、分かりやすく紹介されています。

「行動経済学の基礎を学びたい」「行動経済学をマーケティング施策に応用したい」と考えている方は必見の内容となっております。

それではさっそく見ていきましょう!


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※本記事について解説したYoutube動画もありますので、ぜひこちらも併せてご覧ください。

「行動経済学 = 心理学 + 経済学」

まずはじめに、「行動経済学とは何か」についてお話しします。

行動経済学とは、「人間が必ずしも合理的に行動しないことに着目し、人間の心理的、感情的側面の現実に即した分析を行う経済学」のことです。

「行動経済学 = 心理学 + 経済学」と表現することもできます。

伝統的な経済学の理論は、「人間は合理的に行動する」という前提に基づいていますが、人間は必ずしも合理的に行動するとは限らず、その理論が実際の経済行動に当てはまらないことがしばしばあります。

そこで生まれたのが行動経済学です。

行動経済学とはマーケティングそのものである

また、マーケティングの巨匠であるアメリカの経営学者フィリップ・コトラー氏は「行動経済学はマーケティングの別称である」と述べています。

つまり、人間の実際の行動から「意思決定時のくせ」を明らかにする行動経済学は、長きにわたってマーケティングで実践されてきたことを学術的に紐解いたものであるということです。

その「くせ」を知ることで、消費者の心理に寄り添った、効果的なマーケティング施策が見えてくるのです。

「マーケティングについてもっと知りたい!」という方は、ぜひ以下の記事も併せてご覧ください。

「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門 」

「ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング Webマーケティングの成果を最大化する83の方法」

行動経済学の基礎と応用①:ヒューリスティック

ここからは、行動経済学の代表的な理論を紐解きつつ、マーケティングや社会施策への具体的な応用例もご紹介します。

まず、行動経済学を学ぶ上で避けて通れないのが「ヒューリスティック」という考え方です。

ヒューリスティックとは、過去の経験や直感を参考にして、瞬時に意思決定するプロセスのことです。

フードコートで何を食べるか決める時に、なんとなく直感で「ラーメンにしよう」と決めることがありますよね。

この時の思考プロセスが、まさにヒューリスティックです。

一方で、様々な条件を考慮した上で、じっくり熟考して意思決定するプロセスのことを「システマティック」と言います。

さらに、ヒューリスティックには「利用可能性ヒューリスティック」「代表性ヒューリスティック」「固着性ヒューリスティック」の3種類があります。

利用可能性ヒューリスティック

皆さんは、テレビCMやWeb広告で目にしたことがある商品をつい購入してしまう、ということはありませんか?

このように、なじみのあるものを選択する意思決定プロセスを「利用可能性ヒューリスティック」と呼びます。

繰り返すことでブランディングに役立つ

利用可能性ヒューリスティックの応用例としては、「いたる所で印象に残る広告を繰り返し出す」ことが挙げられます。

例えば、「セブン・イレブン、いい気分〜♪」のような親しみやすい音楽を繰り返し聞かせることで、消費者の好印象を得ることができます。

私自身も、コンビニといえば何故かよくセブン・イレブンに入ってしまうのですが、無意識のうちにこういった企業の戦略に乗せられているのかも知れません。

とにかく、「よく見かける」を実現することが、企業のブランディングに役立ちます。

ブランディングについてさらに詳しく知りたいという方は、「デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 顧客体験で差がつく時代の新しいルール」も併せてご覧ください。

自分ごと化させる:カクテルパーティー効果

人は、興味のある対象、意識している対象にのみ注意を向ける「選択的知覚」という能力を持っています。

皆さんも経験があるかも知れませんが、大勢の人が話しているパーティーの喧騒の中でも相手の話だけを聞き取ることが可能ですよね?

こうした現象を「カクテルパーティー効果」と呼び、マーケティングにも応用が可能です。

例えば、ダイレクトメールを送るときに、「世田谷区にお住まいの70代の方へ」のように、対象を絞った表現を使うことで、受け取った人が手紙を開封する確率を高めることが期待できます。

私たち人間は、興味のある情報に対してしか反応しないのです。

代表性ヒューリスティック

代表的(典型的)なものだけを見て、全体も同様であると結論づける直感的な考え方を「代表性ヒューリスティック」といいます。

例えば、友人3人が同じ「お守り」を買った後に彼氏ができた時、直感的に「そのお守りに縁結びの効果がある!」と考えてしまいますよね。

しかし、3人ではサンプル数が少なすぎるので、実際のところ効果があるかどうかは分かりません。

このように、サンプル数が少なくても確率を信じてしまうことを「少数の法則」と呼びます。

終わり良ければすべてよし:ピークエンドの法則

代表性ヒューリスティックの一つとして、「ピークエンドの法則」があります。

これは、「ピーク(絶頂時)」と「エンド(最後の時点)」が思い出全体に対する印象を左右するという理論です。

例えば、プレゼンでは最も盛り上がった場面が印象に残りますし、退職時も最後の引き継ぎや挨拶をしっかりやることで好印象を残すことができます。

何事においても、「最高に盛り上げる部分」と「締めの部分」を意識して、相手に好印象を残せるようにピークエンドの法則を活用しましょう。

固着性ヒューリスティック

人は、自分の意見を肯定する理由は積極的に探す一方で、反対意見は受け入れづらい傾向があります。

このように、自分の考えや思い込みに執着し、肯定的な情報を集めてしまうことを「確証バイアス」と呼びます。

そして、この「確証バイアス」を引き起こすのが「固着性ヒューリスティック」です。

表現方法だけで人の行動を変える:フレーミング効果

表現の仕方が変わると、全体の印象も変わることを「フレーミング効果」といいます。

この「フレーミング効果」は、広告の訴求力アップなどに幅広く使われています。

例えば、栄養ドリンクを買うときに「タウリン1g配合」と言われるのと「タウリン1000mg配合」と言われるのでは、後者の方がより効果がありそうだと感じませんか?

このように、実態は同じでも「言い方」を変えることで、より消費者の購買意向を高めることができるので、ぜひ覚えておきましょう。

基準価格を提示してより安く感じさせる:アンカリング効果

フレーミング効果の一つで、最初に提示された情報が後の判断に影響を与えることを「アンカリング効果」と呼びます。

例えば、1000万円の車が「今だけ700万円!」と言われたら、「安い!」「この機会に買ってしまおうかな」と思いませんか?

このように、人には最初に受けた印象が錨(アンカー)のように心に残る傾向があるのです。

アンカリング効果も様々なところでマーケティングに活用されており、その代表例がジャパネットたかたなどのテレビショッピングです。

最初は8万円だったのが半額の4万円、さらに今だけ3万円でさらにおまけまで付いてくる、という感じで徐々に値下げしていくのを見たことがある方も多いのではないでしょうか?

このような、アンカリング効果を活用した値下げの見せ方もぜひ活用してみて下さい。

ちなみに、テレビショッピングといえば「ジャパネットたかた」ですが、ジャパネットが提供する本当の価値について、ちきりんさんの「マーケット感覚を身につけよう」で解説されていますので、ぜひ併せてご覧ください。

行動経済学の基礎と応用②:プロスペクト理論

次にご紹介するのは、行動経済学において最も代表的な理論である「プロスペクト理論」です。

「プロスペクト理論」とは、例えば投資のように選択に損得や確率が関係する不確実な状況において、人間がどのようなプロセスを経て意思決定するのかを説明する理論です。

具体的には、以下の2つのステップを経て、最終的な行動を決定しています。

意思決定のプロセス
  • STEP1:編集段階
    自分に与えられた選択肢を認識して、基準となる「参照点」が決まる
  • STEP2:評価段階
    損得勘定をしたり、確率を計算する

損失回避性

皆さんも自覚があるかも知れませんが、人は「得よりも損を重く感じる」性質があります。

それを表したのが、以下の「価値関数」のグラフです。

行動経済学 プロスペクト理論 価値関数
「科学事典(https://kagaku-jiten.com)」より引用

例えば、1000円儲けた(利得)時の嬉しさを「1」とすると、1000円損した(損失)時の悲しみは「2.25」になるというものです。

つまり、額が同じなら、損した時のダメージの方が2倍以上大きいので、人は無意識的に損失を回避しようとします。

これを「損失回避性」と呼びます。

「絶対に」に人は集まる:リスク回避的

人は目の前に利益があるとそれを確実に得ようとする傾向があり、これを「リスク回避的」と呼びます。

この性質をマーケティングに活用した例が、「絶対に〇〇がもらえるキャンペーン」などです。

例えば、「絶対に100万円もらえる」と「50%の確率で200万円がもらえる(はずれたら0円)」であれば、圧倒的に前者を選ぶ人が多くなります。

人は、「絶対に」に弱いということを覚えておきましょう。

行動経済学の基礎と応用③:ナッジ理論

最後にご紹介するのが、行動経済学で近年注目されている「ナッジ理論」です。

「ナッジ」とは「肘で小突くように、自発的に望ましい行動を選択するように促す」ことで、この理論を活かすことで、相手に強制することなく、望ましい行動を取らせることができます。

大手企業や厚生労働省もナッジ理論を実践していることからも分かる通り、とても実用性の高い理論です。

ナッジ理論の中でも代表的な用語である「デフォルト」と「保有効果」について、以下で解説します。

選んでほしい方を選びやすくする:デフォルト

選択肢がある場合に、あらかじめ選ばせたい選択肢を初期設定にすることを「デフォルト」といいます。

例えば、Webサイトなどで会員登録をする際に「メルマガを受信する」に予めチェックが入っていたりするのが、典型的なデフォルトの活用例です。

人間は情報が多いとヒューリスティックを使う傾向があり、元々の選択肢を変更しにくいため、あらかじめ選択されたものを選んでしまうのです。

物や状態を手放したくない心理を利用する:保有効果

自分の持っているものに、実際よりも高い価値を感じることを「保有効果」といいます。

これは先述した「損失回避性」とも関連しており、保有しているものを失うことは「損」を感じるため、なかったものを得る「得」よりも心理的インパクトが大きくなります。

特筆すべきは、「実際に手にしていないものに対しても働くことがある」ということで、これを活用した例は多数あります。

例えば、がん検診のお知らせで「今年受診しないと検査キットをお送りできなくなります」といった文言を添えるだけで、受診者が増える効果があります。

言い方一つで、「損をしているような気」にすることができるのです。

まとめ

いかがだったでしょうか。

人の実際の行動に基づいているからこそ実用性の高い「行動経済学」の基礎と実社会での応用方法が「サクッと」お分かりいただけたのではないかと思います。

他にも本書では、「ハロー効果」や「バンドワゴン効果」など、興味深い理論がたくさん紹介されていますので、気になった方はぜひお手に取ってご覧ください。

マーケターとして働く方の中で行動経済学を知らない人は、知ってる人に比べて発揮できる成果が小さくなるかも知れませんよ?

ではまた!


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