どうも、TJです!(自己紹介はこちら)
今回ご紹介するのは、ソフトバンク株式会社でメディア統括部長を務める井上大輔さんが書かれた「マーケターのように生きろ: 「あなたが必要だ」と言われ続ける人の思考と行動」です。
本書では、マーケティングの考え方を基にした、「何者でもない自分」が最強の武器になる生き方が紹介されています。
「マーケティングの基本的な考え方を学びたい」「やりたいことは特にないけど誰かに必要とされる人間になりたい」と考えている方は必見の内容となっております。
それではさっそく見ていきましょう!
マーケターのように生きるとは?
マーケターのように生きるとは、すなわち「人の期待に応えることを追求する生き方」のことです。
マーケティングは、常に相手からスタートします。
まずは相手に関心を持ち、自分は何ができるかを考えて、期待に応える。
このようなマーケターの視点が、「仕事」「将来のキャリア」「プライベート」で使えるのです。
ここで誤解してはいけないのが、「マーケターのように生きる≠自分らしさを殺すこと」ということです。
自分こそが期待に応えられる相手を能動的に見つけ、自分のやり方で相手の期待に応えていく姿勢が重要です。
ビジネスコンサルタントの大石哲之さんが書かれた「コンサル1年目が学ぶこと」にも、「相手の期待を越え続けること」の重要性が語られていますので、ぜひ併せてご覧ください。
マーケティングとは何か
「アメリカ・マーケティング協会」という組織が提唱する「マーケティングの定義」は、以下の通りです。
正直、難解な文章ですが、3つのポイントに分けて見ると理解しやすくなります。
ポイント❶:マーケティングは活動・一連の組織・プロセス
マーケティングと聞くと、マーケティング部や宣伝部の仕事と思われがちですが、必ずしも専門の組織である必要はありません。
どんな部門や仕事でもマーケティングと呼べる活動やプロセスがあるかもしれない、ということです。
ポイント❷:マーケティングは顧客・パートナー・社会全体にかかわる
マーケティングでは、必ずしも相手が「顧客」である必要はありません。
企業が採用活動をする、大学が学生を集める、政治家が投票を呼びかける、慈善団体が寄付金を募る、そのすべてがマーケティングになり得ます。
ポイント❸:価値のある提供物を創造し、伝達し、運搬し、交換する
ここが最も重要なポイント、すなわちマーケティングの本質と言える部分です。
マーケティングの本質は、「価値をつくり、伝えて、届けて、交換すること」なのです。
本書では、「動物愛護団体が地域の猫を管理するための寄付金を募る場合」を例にとって説明しています。
その団体は「猫が幸せに暮らせる社会」という価値を実現する仕組みをつくり、その活動をポスターなどで広く伝えます。
ポスターを見た愛猫家は、自分のお金を「猫が幸せに暮らせる社会」という価値と交換(寄付)し、団体は寄付されたお金を使って実際に猫が地域と共生するための活動を行い、それを支援者たちに報告することで価値を届けています。
一連の活動を通じて、この団体は価値をつくって、伝えて、交換して、届けていますよね。
マーケティングの4ステップ
マーケティングには、4つのステップがあります。
順に見ていきましょう。
市場を定義する
まずは市場を定義する、すなわち、「価値を提供する相手」を決めます。
前述のように、「マーケターのように生きる」ことは、相手からスタートすることが前提になります。
すべての人を幸せにすることはできないので、ターゲットを絞るのです。
本当にねらうべき市場なのかどうかは、以下の5つの視点で評価しましょう。
価値を定義する
市場を定義したら、「どのように相手の役に立つか」を考えます。
ここで大事なのは、「相手の求めるもの」を深く探ることです。
たいていの場合、相手は自分が必要なものが何なのか、はっきりとは理解していません。
そういう相手に対して、価値にはどんな種類があるのかという「知識」、相手のインサイトを引き出すための「対話の技術」を駆使して、相手の求めるものを明らかにしていきます。
価値の4象限
価値には、4種類あります。
これらは、以下の図のように「機能的か情緒的か」「顕在的か潜在的か」の2軸で分けられます。
ミネラルウォーターを例にとって考えると、実利価値は「ノドの渇きを癒してくれること」、保証価値は「水の品質がしっかりしていそうなこと」、評判価値は「ボルヴィックを飲んでいることで周囲からハイセンスだと思われること」、共感価値は「ボルヴィックを飲むことで精神的な充足感が得られること」と言えます。
ぜひ、普段使っている商品やサービスの、どの価値が自分は気に入っているのかを考えてみてください。
ちきりんさんが書かれた「マーケット感覚を身につけよう」でも、価値を見極めることの大切さが書かれていますので、ぜひ併せてご覧ください。
対話の技術は「実践」によってのみ育まれる
優れたマーケターは、「知識」をベースにして、相手にとっての価値を探り出す「対話の技術」に長けています。
ですが、知識と異なって、技術を身につけるためにはひたすら実践を繰り返すほかありません。
「顧客インタビュー」はまさにその実践の場ですが、同僚や友人との「雑談」も、心がけ次第でその場に様変わりします。
日々、実践の機会を意識的につくりだす、積極的な姿勢を持ちましょう。
元スマートニュース執行役員の西口一希さんが書かれた「実践 顧客起点マーケティング」にも、「N1分析」と呼ばれるユーザーインタビューを基にしたインサイト発見の方法が解説されていますので、ぜひ併せてご覧ください。
価値をつくりだす
価値を定義したら、それを「商品・サービス・コンテンツ」として提供します。
相手が求める価値をカタチにするためには、どの要素がどのような価値に結びついているのか、つまり「価値のレシピ」を知る必要があります。
そして、必ず相手に味見をしてもらい、フィードバックを基に改善を行う。
このように、相手との対話を繰り返して、価値をつくりだしていくのです。
価値のレシピを構成する3つの「原材料」
「価値のレシピ」は「機能・品質」「主張」「外観(パッケージ)」の3つの原材料で構成されます。
これらの3要素は、マーケティング4Pの「プロダクト」を3つに分解したものです。
「機能・品質」に対して、「主張」は「提案の切り口」と言い換えることもできます。
例えば、静岡にある有名な「サウナしきじ」が品質の高さで勝負しているとすれば、神楽坂にある「個室サウナ」は「提案の切り口」で勝負しているサービスだと言えます。
各原材料が、前述の「4種類の価値」のどれを生み出す源になるかは、以下の表で示す通りです。
コンセプトをつくる
ここまで、価値をつくりだす「原材料」の話をしてきましたが、これらをどう組み合わせたら望む価値が実現できるのでしょうか。
商品やサービスを開発する時は、はじめに「コンセプト」をつくります。
コンセプトとは、言わば「商品の企画書」で、広告などで使われるキャッチフレーズとは別のものです。
具体的には、定義した価値を実現するために、「機能・品質」「主張」「外観(パッケージ)」をそれぞれどのようなものにしていくかを決めます。
例えば、日本コカ・コーラが販売している天然水「い・ろ・は・す」のコンセプトは、以下のようなものだと考えられます。
「機能・品質」によって「実利価値」「保証価値」といった機能的な価値を生み出しており、「主張」や「外観(パッケージ)」によって「評判価値」「共感価値」といった情緒的な価値が生み出されていることがイメージできると思います。
特にミネラルウォーターのような、機能的な価値に大きな差異がないカテゴリにおいては、情緒的な価値を生み出す「主張」「外観(パッケージ)」が重要なファクターになります。
コンセプトを検証する
コンセプトを決めたら、「コンセプトテスト」を行います。
これは、価値を提供したい相手と対話しながら、コンセプトをより良いものに調整していく作業です。
具体的には、商品のコンセプトを文章やイラストで表現したものを顧客に見せて、どう感じるか答えてもらうアンケート調査を実施します。
さらに、コンセプトテストを経てできた試作品を実際に顧客に使ってもらって感想を聞いたり、「テストマーケティング」といって、一部地域に限定して商品展開をして、そこで得た反応をもとに改善を加えて全国展開をする、といったやり方もあります。
このように、「価値をつくりだす」ことの本質は「相手との対話」にあるのです。
「機能・品質」も「主張」も「外観(パッケージ)」も、すべて価値を実現するための手段でしかありません。
その前提を理解した上で、相手との対話を通じて価値をつくりだし、磨き上げていくことが大切です。
価値を伝える
最後に、つくりだした価値を相手に伝えます。
至極当然ですが、相手がサービスや商品を知らないと相手の役に立つことはできません。
「良い商品をつくり、広告宣伝で伝える」ことができてはじめて、価値を生み出すことができます。
パナソニックの創業者、松下幸之助さんも以下のような言葉を残しています。
われわれ商人・産業人は「この商品をあなたがお使いになれば、便利で利益になりますよ」ということを消費者にお知らせする義務がある。その義務を果たすために「宣伝」をするのだ。
「STEP4 価値を伝える」より引用
つまり、相手の役に立ちたいなら、広告・宣伝・自己アピールはビジネスマンの「義務」なのです。
ちなみに、北の達人コーポレーション社長の木下勝寿さんが書かれた「ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング Webマーケティングの成果を最大化する83の方法」にも、価値を伝えるためのユニークな方法論が解説されていますので、併せてご覧ください。
価値は「3段階」で相手に伝える
価値が伝達されるプロセスは、「覚えてもらう」➡「好きになってもらう」➡「選んでもらう」の3段階に分けられます。
これらは、マーケティングの世界では「態度変容」もしくは「カスタマージャーニー」と呼ばれています。
ここで重要なのは、「知ってもらう」と「覚えてもらう」は決定的に違うということです。
大事なのは購入検討時に「思い出してもらう」ことなのです。
マーケティング用語で「プレファレンス」とも呼ばれますが、これについては森岡毅さんの「確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力 」に詳しく書かれていますので、ぜひ併せてご覧ください。
覚えてもらうために効果的な方法は、「繰り返し伝える」「自分ごとにしてもらう」「心を動かす」の3つです。
これは英単語を覚えることと似ています。
学生時代に英単語を覚える時に、単語帳で繰り返し暗記したり、自分ごと化しやすい例文を書いてみたり、実際に感情をこめて会話で使うことで心に残ったり、と様々な工夫をした経験があるのではないでしょうか。
このように、覚えてもらうために工夫をすることを、広告の世界では「クリエイティブ」と呼びます。
余談ですが、「心を動かす」ために大事なことが書かれた本がありますので、気になった方はこちらも併せてご覧ください。
まとめ
いかがだったでしょうか。
マーケターのように生きるために必要な、マーケティングの考え方がご理解いただけたのではないかと思います。
自分の人生にマーケティングの考え方を応用することで、「職場で求められる人」「プライベートでも必要とされる人」になることができます。
人生とは、「自分という商品」を生涯かけてつくり上げることに他ならないからです。
マーケティングにおける「商品」を「自分」に置き換えて、自分が誰にどんな価値を提供することができるかを常に考えましょう。
それこそが、「マーケターのように生きる」ということなのです。
「マーケティング」についてもっと理解を深めたい、という方はこちらの記事も併せてご覧ください。
ではまた!
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